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飛輪海小説スピンオフ『Kiss Me Now !』Ep.3

                 Ep.3 「マンゴーKISS

ジニー篇

「起きろ!」

 誰かがアタシを起こす声がする。まだ眠いのに誰? アタシを起こすのは・・・・・・。

「おい! 鶏女(ジイニュイ)!!」

 ・・・・・・禹哲?

 ぼんやりと禹哲の顔が見える。相変わらず不機嫌そうな・・・・・・。

 禹哲!?

 アタシは飛び起きた。

 何? ここどこ? 禹哲がなんで!?

「なんでオマエが俺んちのソファーで寝てるんだ!」

「え? 禹哲んち? そうだ! 亞綸が泊まってけって! だってバッグをね!」

「ああ、うるさい! イッテエ・・・・・・また二日酔いかよ・・・・・・まあだいたいのことは予想つく。俺を送ってきてそのまま送り狼ってとこだろ! 俺の寝顔見て思わず唇奪ったりしてないだろうな!」

「バッカじゃないの! バッグをBaTに忘れてきたから仕方なく泊まったの! 誰が送り狼よ、狼はそっちでしょ!」

「はあ?」

 ヤバッ! もしかして覚えてない? 身代わりキス!

「冗談よ! 何もなかったってば!」

「あってたまるか! ・・・・・・そういえば昨日言ってたよな。キスは恋愛じゃないって? 期待に応えて狼になってやろうか? 俺、デビュー以来、契約守っていい子にしてたから結構たまってるんだよなあ・・・・・・」

 禹哲はそう言いながら狼が忍び寄るような格好でソファにあがってくる。

「だから酔ってなくてもキス魔になるかもな、誰かれかまわずにさ!」

 禹哲が跳びかかると同時にアタシは身をひるがえして・・・・・・ソファから落ちた。

「痛ったあ・・・・・・」

「バ~カ。マネージャーならキスくらい体張れよな。俺が外で問題起こして責任取らされるのはオマエだろ? 事務所はなんだかんだ言って俺を手放さないだろうからな」

 大した自信だ。でもクビになるなら道連れにするんだから!

 平静を装いながらも心臓だけは勝手にドキドキして止まらない。逃げなかったらキスされてた? だけどキスを“それくらい”と言ってのける唐禹哲に腹が立つ。アタシにとってキスは恋愛において聖域だったのに! 昨日それを奪っておいきながら全然覚えていないのにはもっと腹が立つ。

 あ、そういえば、事務所に朝バッグを届けさせるって亞綸言ってたっけ。

 今何時だろ・・・・・・。時計が見当たらない。

 そばにあったリモコンでテレビを付けるとタイミングがいいのか悪いのか、ちょうど呉尊の極秘結婚の話題が終わったところだった。本当に結婚しちゃったんだHIROと。禹哲は画面を一瞥したけど不機嫌な顔で何も言わない。

 そうだ、時間・・・・・・画面の時計は8:08だ。

「うそ、8時過ぎてる! アタシ事務所行かないと!」

「シャワー一緒に浴びてくか?」

 禹哲が着ていた黒のシャツを脱ぎ捨てた。禹哲の上半身なんて見慣れてるはずなのに、思わず目を逸らす。この部屋で二人きりだとまた心拍数が上がりそうだ。

「お一人でどうぞ! 事務所まで走ってくと何分かかる?」

「知るか。歩きで10分だ」

「ちゃんと午後からの打ち合わせ来てよね! じゃあね!」

「おい!」

 振り返ると何か袋が飛んでくる。とっさにキャッチして中身を見るとクロワッサンと牛乳パックだった。

「ありがとう!」

 もう禹哲の姿はなく、シャワールームの扉が閉まる音がした。

「いってきます!」

 何これ? まるで同棲してるみたいじゃない。

 アタシは禹哲の部屋を急いで後にした。

 着替えもメイクもなんとか間に合った。事務所のメイク道具と衣装をこっそり拝借しちゃった。他の女子社員が朝帰りの時に使う手を、まさかこのアタシがすることになるなんて。

「高(カオ)さん!」

 受付から連絡をもらってロビーへ行くと、目立ちすぎるくらい背の高い高以翔(カオ・イーシャン)が待っていた。

「はい、昨夜の忘れ物のガラスの靴ならぬガラスのバッグ」

「わざわざごめんなさい。夜のお仕事なんだからまだ眠いでしょ?」

「いいや。なあ、あれからオーナーの部屋に泊まったんだって?」

「べ、別に何もなかったんだから!」

 ヤバっ! 受付嬢がヘンな目で見てる。

「高さん、こちらへどうぞ! コーヒーでも飲んでいって」

「サンキュー、ジニーちゃん。それと、高さんってのは勘弁してくれ。あだ名みたいだろ? 翔(シャン)でいいよ」

「ジニー! ジニー! ねえ、誰よ? 背が高くて渋くってすっごくステキじゃない?」

 高さん、じゃなくて翔をロビーの片隅の接待席に案内してからコーヒーを淹れに行く途中、受付嬢に呼び止められる。

「え? 行きつけのバーのマスターってとこかな」

 なあんて、まだ一回しか行ったことないないけど。それにマスターだかバーテンだか知らないし。

「おい、あの男、誰だって? どこと契約してるんだ? モデルだろ?」

 スカウト担当の同僚からも質問攻めだ。それほどに目を引く逸材ってこと?

「えっと・・・・・・モデルじゃないと思います。バーテンかな?」

 たしかに尋常じゃないかっこよさかも。組んでる脚、長っ!

「翔、なんかみんなが色めきたってて、このままだとスカウトされちゃうくらいの勢いかも」

「そう? 面倒だから飲んだらさっさと帰るよ」

 翔はコーヒーを飲み干すと、「じゃあ!」と言って長いコンパスで颯爽と帰っていった。

「あれ? なんだよ、帰っちゃったのか? ジニー、しっかり引き止めておいてくれよ!」

 そんなこと言われたって、スカウトはアタシの範疇じゃないもん!

禹哲篇

 昼過ぎにはやっと頭痛も治まり、事務所での打ち合わせのあとジムに行く。鶏女のやつ、ずっと俺を避けやがって。

 ジムに来るのは久しぶりだ。汪東城がしつこく誘ってくるから仕方なく指定してきた時間に来てやった。それに二日間のアルコール漬けの体を覚ますのに調度いい。

「オレだって、櫻雪(ユンシュエ)が頼むから仕方なく誘ってんだよ」

 汪東城がランニングマシーンで走りながら不機嫌に言った。

「何も言ってないだろうが」

「そんな顔してたからわかるんだよ! 仕方なく来てやった顔! 櫻雪は心配してんだ、こんな恩知らずな弟でもな」

「こんな恩知らずな弟がいやなら、姉貴との結婚やめたらどうだ?」

「死んだってやめないね。今じゃ偉偉もオマエよりオレのほうになついてるしな~」

 まるで子供のケンカだな。炎亞綸もこんな兄貴じゃ相談する気にもならないわけだ。だが一応伝えといてやるか。

「炎亞綸が悩んでたぞ。なんとかしてやれよ」

「は? あいつ、悩むのが趣味なんだよ。悩んでない時のほうが少ないくらいだ。ほっとけばいいさ」

 なるほどね。こんなもんか、兄弟みたいなものってのは。

「昔と違って、自分で解決する力を持ってるはずだ。それを見守るのがオレのやり方だ。・・・・・・それで今度は何を悩んでるんだ?」

「結局気になるのかよ! 本人から聞く気がないならいいさ。俺が勝手に話せるような類の話じゃない」

「大東! 紹介しろよ」

 いいタイミングで郭品超(クオ・ピンチャオ)が現れた。芸歴も年も相当上。まともな挨拶しとくか。

「初めまして、郭さん。唐禹哲と言います」

「ディランでいいよ。タメ口でいいし。“愛我”聴いたよ。大東からCD貰ったからな。こいつあちこちで配ってるみたいだぞ。炎亞綸のCDと一緒にな。いい兄貴を持ったな」

「ディラン、余計なこと言わないでくれよ!」

 汪東城が慌ててたしなめた。

 へえ、あいつがね。案外おせっかいなんだな。

 兄貴、か・・・・・・。

 そう悪くはない存在かもな。

       *       *       *

 あれから忙しくて飲みに行く暇もない。ただ仕事場と家を往復するだけの日々を過ごしていた。どこかよそよそしく事務的だったアイツも、ここのところ、以前のような口うるさい鶏女に戻っていた。

 今日は同じ事務所の同世代三人での撮影で鄭元暢(チェン・ユエンチャン)と彭于晏(ポン・ユウイェン)は先にスタジオ入りしていた。

「新人なのに遅れてすみません! ほら、禹哲もあやまって!」

 鶏女が俺のわき腹を肘でつついくる。やめろ、弱いんだ、そこは。

「遅れてすみませんでした」

「いいよ、前の仕事が押したんだろ? 仕方ないさ。なあエディ」

「そうそう、気にしなくていいよ、ジニー!」

 なんだ、彭于晏は鶏女狙いか。物好きもいるもんだな。

「小綜(シャオツォン)、久しぶりに一緒にお仕事できて嬉しいです!」

 おいおい、鶏女は鄭元暢狙いか? 身の程を知れよ。

「ジニー、がんばってるみたいだね。またボクの付き人に戻ってほしいけれど、今はもう立派なマネージャーだね。なあ禹哲?」

「ええ、ジニーはよくやってくれてますよ、小綜」

 うるさいだけの鶏女なんざ返して欲しけりゃいつでも返してやるよ。まあ俺の決めることじゃないから残念だったな鄭元暢。

「ジニー、今度はオレのマネージャーも頼むよ~」

 そう言って彭于晏まで争奪戦に加わってくる。彭于晏のマネージャーはフィギュア好きのオタクらしいから、こんな鶏女でもよく見えるんだろう。

「アタシなんか、まだ全然ダメなんです。でも二人にそう言ってもらえて感激です!」

 鶏女め、何本気に受け取ってんだ、バ~カ。

「あの・・・・・・小綜、もう風邪は治りましたか?」

「え? うん、もうすっかりいいよ。・・・・・・知っててくれたんだね」

「このサプリ、とってもいいので予防の為にのんでみてくださいね、また風邪ひかないように。もうすぐドラマの撮影に入るんですから」

「ありがとう、ジニー! 相変わらず優しいんだね」

 なんなんだ、鶏女のやつ。もう関係のない鄭元暢のスケジュールから体調管理まで気にする必要なんてないだろうが! 俺にはそんなサプリ、見せたことすらないぞ!

「あ、そうだ禹哲!」

「・・・・・・なんだよ」

 俺にもサプリか? ついでならいらないっつうの!

「何してんの、早くスタイリングしてきてよ。ただでさえ待たせてるんだから」

 ・・・・・・なんなんだ、この対応の違いは!!

 

 俺が戻ると、鶏女は彭于晏と楽しげな様子だ。

「エディのドラマ始まったね! エディの役、おもしろいね。すごくよかった!」

「見てくれたのか! そんなによかった? どのへんが一番よかったかジニーの意見聞きたいなあ」

「たくさんあるけど、あ、でもそれより、撮影前に居眠りでもしちゃったの? なんかほっぺたに跡が付いてたのみつけちゃったんだけど!」

「うわ、よく見てるのな。待ち時間長くてさ、ついつい眠っちゃってさ」

「もう、エディったら!」

 そう言って二人は笑いあう。・・・・・・他のヤツのチェックし過ぎだろ! おまえ、いったい誰のマネージャーだ! 

「おい、鶏女!・・・・・・」

「唐禹哲さん、カメラマンがお待ちですのでお願いしま~す!」

「え? あ、はい・・・・・・」

「彭于晏さんも一緒にお願いします!」

「ほ~い! じゃあな、ジニー!」

「エディ、がんばってね!」

 おいおい、言う相手が違うだろうが!! 

 

 

ジニー篇

「ジニー、入るよ~」

 ノックと共にエディが控え室に入ってきた。手には大好物のマンゴーアイス!

「差し入れだぞ、これ、好きだろ?」

「うん、大好き!」

 エディがなぜかちょっと照れたような顔をした気がした。なんで? 

「でもさ、もう一個しかないから禹哲がまだ撮影してる間に食べちゃいな」

「うん、うん、そうする!」

「ちゃんとカップはわからないように捨てとけよ!」

「うん! ありがと、エディ!」

 ばれないように急いで食べなきゃね。いっただきま~す! 

 

 急ぎながら堪能したマンゴーアイスも、あと一口というところで、ノックも声もなくドアが開いた。

 それは大口開けて、最後の一さじを堪能しようと口に入れる一歩手前だった。

「鶏女、なんだそれは」

 禹哲がヅカヅカと近づいてくる。 

「おい、俺の分はどこだ。早くよこせよ」

「もうないわよ~!」

 アタシはその最後の一さじを急いで口に入れた。

「オマエ!」

 スプーンを持った手首を禹哲につかまれたアタシは、そのまま力強く壁に押さえ付けられて、ドンッと鈍い音が響いた。禹哲の顔が近い。

「暴れて騒ぐと、隣にバレるからな」

 え!? 

 気付くとアタシの冷えた唇に禹哲の温かな唇が押し付けられていた。

 驚きのあまりに声をあげてしまったけど口を塞がれていてうめき声にしかならない。抵抗しようと押さえつけられてる手首に力を入れてもビクともしない。

 薄い壁伝いに「なんだ? 今の振動」と隣部屋のエディのマネージャーの声が聞こえてきた。

 みつかったらアタシだけ解雇? そんなの、ヤダ・・・・・・そう思ったとたんに力が抜けていく。

 禹哲はソフトクリームを舐めたり唇ではむようにしてアタシの唇を吸う。こんなキス初めてだ。されるがまま、力なくうっすらと目を開けていると禹哲と目が合った。恥ずかしくなって目を閉じると、時折聞こえる禹哲のキスの音が耳に響いて、なんだか溶けていくようなヘンな気分になっていく。

 上唇から下唇、下唇から上唇に移る度に禹哲の温かな舌がアタシの冷えた舌に触れてくる。ためらってるの? じらしてるみたいに触れるだけなんて・・・・・・。HIROのせい? 胸がキュっとなる。あの夜の身代わりキスが、どんなに熱く、どんなに激しかったか・・・・・・。耐え切れず口を開くと禹哲の温かな舌は、すぐにアタシの冷えた舌を包み込む・・・・・・。まるで味わうみたいな禹哲の舌に、アタシは自然に合わせるように受け入れ、絡ませて・・・・・・。

 トントン。

 ドアがノックされると同時に禹哲の体はアタシからサッと離れた。

「すいません唐禹哲さん。次の準備が整いました」

「すぐ行きます!」

 まるで何事もなかったように禹哲はスタッフに返事をして戸口へ向かう。

 アタシは全身の力が抜けたように、壁にもたれたままヘナヘナと座り込んでしまう。

 何? なんだったの? 禹哲の背中をうつろな目で追うと、禹哲が振り返って嘲笑するように言う。

「おまえ、ガサツで色気ないわりにはエロいキスするのな」

 瞬間的に火が付いたように顔が熱くなる。アタシはそばにあったクッションを禹哲に投げつけたけど、もう禹哲の姿はない。 

 冷静に感想言うなんてサイテー!  脅迫しといて・・・・・・あんなふうに・・・・・・ズルイよ唐禹哲・・・・・・。心も、頭も混乱している。

 

 だけど、

 あの時、

 アタシの唇は、

 完全に禹哲を求めちゃってた・・・・・・。

 Ep.4「リアルKISS」へつづく・・・・・・

目次と登場人物~Kiss Me Now !

目次と登場人物~ヒロ&アミン篇

目次と登場人物~大東&亞綸篇

目次と登場人物~SP

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