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飛輪海小説スピンオフ『Kiss Me Now !』Ep.1

                Ep.1 「フェイクKISS

ジニー篇

 

 イライラする。どうしてマンションに帰ってもなければ、携帯にも出ないのよ! 昨日あれだけ言っておいたのに! 7時には迎えに行くから飲み過ぎないようにって! 仕事に遅刻するようなことになったら絶対に許さないんだから! 唐禹哲!

 あ・・・・・・やっと出た!

「唐禹哲! 今いったいどこにいるのよ! もう7時まわってるんだから! 遅刻よ遅刻!」

「・・・・・・ヒロ? ・・・・・・じゃないよね、えっと、あの・・・・・・鶏女(ジイニュイ)・・・・・・さん?」

 え? ・・・・・・女の声?

「えっと・・・・・・アタシ、ジニーですけど・・・・・・マネージャーの・・・・・・」

 禹哲のヤツ、携帯の登録まで“鶏女”にしてるのね! アタシの名前はジニーよ、ジニー! ・・・・・・ってそれより誰? この人・・・・・・?

「禹哲ならアタシのうちで眠っちゃってて・・・・・・仕事の時間なの?」

「え? あ、ええ」

「迎えに来てもらえます? BaTってお店のあるビルの二階なんだけど、分かるかな?」

 BaT・・・・・・それは昨晩、禹哲を送って行った店だ。そう、昨日仕事を終えた禹哲はいつもよりも疲れきった表情だった。元気がないというより憔悴しきっていた。それなのに飲みに行くと言ってきかず、言われるがまま車でBaTというバーまで送っていったのだ。

 禹哲は半年ほど前からアタシが担当している新人アーティストだ。それまでは人気スターの小綜の付き人をしていたアタシだけど、禹哲の加入で彼のマネージャーになったのだ。

 あのときは、はっきり言ってショックだった。だってアタシは小綜のそばにもっといたかったから・・・・・・。優しくて思いやりがあって、いつも笑顔の素敵な小綜。

 それなのに今は、嫌味で意地悪な新人の唐禹哲担当なのだから。それまでの付き人からマネージャーに昇進したことは嬉しかったけれども、まさかこんなにイヤなヤツの担当になるなんて! 

 禹哲ときたら、他のスタッフや芸能人の前では礼儀正しい好青年のくせに、アタシの前だと、途端に本性を現すんだから!

 この世界に憧れ、夢を持って入ったのに、こんなことになるなんて・・・・・・。大ファンだった炎亞綸にさえまだ一度も会えてないし・・・・・・。小綜の付き人時代、やっと巡ってきた炎亞綸と会える仕事の当日、アタシはおたふく風邪であることが判明。ドラマの撮影でたった一度しかなかった小綜と炎亞綸の共演シーンに、アタシは同行できなかったのだ・・・・・・。

 アタシってつくづく運のない女なんだ・・・・・・。

        *       *       *

 車をビルの前に路駐し、アタシは薄暗く狭い階段を駆け上がった。

ずいぶん古い建物だ。レトロな雰囲気で映画みたい。どんな人だろう・・・・・・禹哲のカノジョなのかな? でも契約で禹哲は恋愛禁止なはずだ。もしそうならアタシは二人を別れさせなければいけない。

 二階の廊下は、少し床が軋む音がする。一番奥の部屋だってカノジョらしき人が言っていた。アタシはドアの前に立つと、一呼吸おいてからノックする。するとすぐにドアが開く。

「ヤンさん、もうちょっと下で待ってて・・・・・・あれ?・・・・・・キミ誰?」

 キミ誰? そう聞いたのはどこかでよく見たことがある人だった。そうだ、炎亞綸に似ているんだ。こんなにもそっくりな人、いるのね・・・・・・。

「ヤンさんじゃないの? あ、もしかして鶏女さん? 早かったのね!」

 そう言いながら出てきたのは、ショートヘアーがすごくよく似合ってて、まるで天使みたいな女の子だった。朝の光をバックにして戸口に並ぶ二人は、この世のものとは思えないくらい綺麗・・・・・・。

「鶏女(ジイニュイ)? 面白い名前だね」

 炎亞綸のそっくりさんが輝くような、はにかんだ笑顔で言う。声までそっくり・・・・・・。

「ち、違います! 季妮(ジイニー)・・・・・・蘇季妮(スー・ジイニー)です! みんなはジニーって呼ぶのに、唐禹哲だけが勝手にそう呼んでるだけで・・・・・・」

「霖(リン)、あのね、禹哲のマネージャーさんよ。迎えに来てもらったの」

「そうなんだ、あ、ここで見たこと、全部忘れてもらえるかな? キミも業界人ならわかってくれるよね?」

 本物だ・・・・・・本物の炎亞綸だ! 

「は、はい! あ、あの、アタシ何も見てません! 絶対に誰にも言いません! 握手してもらってもいいですか!?」

 緊張でうわづりながらもたたみかけるように一気に言うと、炎亞綸はにっこりと微笑んだ。

「キミ、心地いい素敵な声してるね」

 炎亞綸はそう言って震えるアタシの手を握ろうとしたときだった。

「朝からけたたましい声出すな・・・・・・やかましい鶏女! なんでここにいるんだよ!」

 禹哲が不機嫌な顔して炎亞綸を押しのけ言い放つ。

「なんでって、もう仕事へ行く時間なんですけど!」 

「イテっ・・・・・・ 静かにしろよ! 鶏女!」

「まさか二日酔い? あれだけ言っておいたのに!」

「それじゃアタシたち仕事だから先行くね。禹哲、この鍵かけたら下のメールボックスに入れておいて! 鶏女さん、禹哲をよろしくお願いします!」

 ジニーだって言ってるのに・・・・・・。天使は炎亞綸と連れ立って階下へ行ってしまった。炎亞綸がすれ違いざまに人差し指を自分の唇にあて、小さくウインクしてくれたことに、まだドキドキが止まらない。なんて素敵な口止めのしぐさ・・・・・・。

「おい鶏女! 何ニヤけてんだ! 行くぞ!・・・・・・っつ、頭イテえ」

 禹哲は慣れた手つきで鍵をかけると、さっさと行ってしまった。アタシは我に返り、後を追う。階段に向かってあわてて走りこむと、ちょうど上の階から降りてきた人とぶつかりそうになり、よけた拍子に階段を踏み外してしまった。

「危ない!」

 アタシの体をその誰かがしっかりと抱え込んだ。うしろからギュッと力強く抱きしめるように・・・・・・。

 あまりにも驚いたせいなのか、声も出ず、抱きかかえられたままの状態で振り返る と、そこには飛輪海の大東そっくりの顔がある。

「大丈夫?」

「・・・・・・・はい・・・・・・」

 やっと出た声もかすれて消え入りそうだ。

「気をつけてね。それじゃあ急ぐから」

 大東そっくりな彼は、階段を駆け下りて行く。そして下から禹哲の声が聞こえてくる。

「結婚前から姉貴んちにいりびたるなよ汪東城!」

「そういうおまえは昨日ヤケ酒飲んで莉莉んちに泊まったんだろ?」

「なんで、知って・・・・・・ウィルバーのやつペラペラと!」

「そう落ち込むなって! これで気持ちに区切りが付けられるだろ? じゃあな! あ、そうそう、あさってジム集合忘れんなよ!」

 ・・・・・・階段中に響く二人の会話から察すると、大東そっくりな彼は本物の大東で、大東が来月のクリスマスに結婚するっていう噂の一般人女性は禹哲のお姉さんということになる。まさかそんなこと! ・・・・・・あ、でもクリスマスと言えば、禹哲がどうしても午後からはオフにしてほしいって言うから、苦労してスケジュール調整したんだった。

 つまりお姉さんと大東の結婚式に出席するためだったってことになる。こんな大事なこと、禹哲はマネージャーのアタシに隠していたなんて! 

 それにしもヤケ酒ってどういうことだろう? 禹哲の昨日の様子からして、よっぽどのことがあったのかも・・・・・・。今日はちょっとは優しくしてあげたほうがいいのかな?

「唐禹哲、朝食どうする? 何か買っていこうか?」

 禹哲は返事をしない。・・・・・・腹が立つ! 優しくしてあげてんのに!

「さっきの子、もしかして噂の黄莉莉? やっぱり炎亞綸と付き合ってるんだ・・・・・・」

「うるさい」

 いつにも増して不機嫌な禹哲。ん? まさか禹哲は黄莉莉に恋愛感情を持ってて、炎亞綸に嫉妬してるってこと? それでヤケ酒? 

 失恋でヤケ酒なんて、案外禹哲も普通の男なんだ・・・・・・。ちょっと可哀想・・・。ってそうじゃないでしょ! 思いが叶わなかったにしろ、“恋愛”ってキーワードは見過ごせない! 契約上、禹哲は“恋愛禁止”なんだから!

「わかってるわよね?」

「・・・・・・何がだ?」

「何がって、“恋愛禁止”のことよ!」

「黙れ。オマエの声、マジ、ウザイ」

 ちょっとハスキーな声にただでさえコンプレックス感じてるのに! でも炎亞綸は“心地いい”って言ってくれた・・・・・・。

 禹哲がアタシの声がキライなのは前々からわかってる。でもだからって黙ってられない。

「契約違反だからね!」

「はあ?」

「恋愛は契約違反だって言ってるの! 忘れたなんて言わせないだから!」

「オマエの言う、恋愛ってなんだよ? キス? それともそれ以上の気持ちいいこととか?」

「れ、恋愛ってそんな単純なものじゃないんだから! 体の関係だなんて思ったら、大間違いよ! もっと純粋で、胸が締め付けられたかと思うと、ホワンって暖かくなったりして・・・・・・」

「へ~ じゃあキスとか気持ちいいことは“恋愛”じゃないってことか?」

「そ、そうよ!」

「そっか、よかった。俺、キス魔なんだよなあ、特に酔うとさ。じゃあ俺がそういうことしても咎められないんだな?」

 え? アタシったら勢いで・・・・・・でも今さら引っ込みがつかない。

「もちろん・・・・・・で、でも事務所や世間には・・・・・・知られると・・・・・・やっぱり・・・・・・」

「それくらい俺だって心得てるさ。人気商売だからな。そういうことは隠れてこっそりやるのが楽しいもんだろ?」

 唐禹哲はそう言いながら、アタシの肩を抱き寄せる顔を近づけてくる。アタシは思わず目をつぶった! ・・・・・・だけどアタシの唇にはなんの感触もない。

・・・・・・目を開けると唐禹哲の視線とぶつかった。唐禹哲の顔はまるでキスするときみたいに少し傾いている。

「キスされると思ったか? フェイクだよ。ば~か! 誰がオマエとなんか」

 唐禹哲はアタシのおでこを人差し指で一突きする。アタシはそのまま後ろに座り込み、言葉がみつからない・・・・・・。

「今度のMV撮影、フェイクキスでいいって監督が言ってただろうが。だけどけっこう可愛いコなんだよな~相手役のコ。寸止めする理性が働くかどうか・・・・・・。愛のないキスならとがめないってオマエが言ったんだからな。覚えとけよ」 

 そこでちょうど仕事場に到着し、禹哲はさっさと車を降りていった。

“キスは恋愛じゃない”・・・・・・アタシってばもしかして、取り返しの付かないことを言ってしまったんじゃないかな・・・・・・。

        Ep.2「身代わりKISS」へつづく・・・・・・

目次と登場人物~Kiss Me Now !
目次と登場人物~ヒロ&アミン篇

目次と登場人物~大東&亞綸篇

目次と登場人物~SP

 

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