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飛輪海小説『ステップアップ!』第十一話~ヒロ篇

    第十一話「呉尊の恋、亞綸との約束」~ヒロ篇

 私は呉尊に背を向けた状態で、彼の腕の中で眠ろうとしていたけど、なかなか寝付けないでいた。 たった五時間前には、阿旭と月を眺めてたなんて・・・。 阿旭のことが頭から離れない。 でもこんなに優しい呉尊に、なんの不満もない。 どうして私なんかを選んでくれたのかな。

「呉尊、もう寝ちゃった?」

 北京帰りで疲れているだろうから、眠ってしまったに違いない。 だけど呉尊の眠そうな声が返ってきた。

「まだ起きてるよ・・・どうした?」

「眠れなくて・・・。 ね、どうして私のこと好きになったの? いつから? まだ聞いたことなかったから・・・」

「うーん・・・いつだったかな・・・日本のCDデビューの前かな? レコーディングの日にヒロもスタジオに来てただろ?」

「うん、呉尊と大東に発音教えるの、すごく大変だったっけ。」

 あの日、亦儒と亞綸は早く終わったけど、呉尊と大東は何度も録り直しだった。

「やっと終わって、ボクがお弁当を一つ持って帰ることになったよね? それで家に帰って袋をあけてみたら、いつの間にかお弁当と一緒に梅干が入ってたんだ。 しかも“お帰りなさい。 食欲のない時には梅干が一番。 疲れもとれます。”ってメモに書いてあった。」

 思い出した。 じゃ、呉尊は私からだってわかってたんだ!

 いつもの呉尊なら、お弁当を二つは持って帰るのに、あの日の呉尊は一つだなんて、疲れすぎて食欲がないとしか思えなくて。 だからこっそりMy梅干を入れておいたのだ。  京都の母が送ってくれた梅干を、私はいつも持ち歩いている。

「ボクはいつも誰もいない家に一人で帰って、一人で食事する。 慣れたけれど、やっぱり無性に孤独を感じる時もある。 だからヒロの心遣いとメッセージに涙が出そうになった。 お帰りなさいって言葉、本当に嬉しかったよ。」

 呉尊はそう言いながら私の髪を愛おしそうにやさしく撫でている。 私のほうこそ、いつも彼の心遣いに感動させられっぱなし。 今日の料理だって、本当は疲れてるはずなのに頑張ってくれた。 今は他のことは何も考えないでおこう・・・。

「ヒロはいつからボクを? ヒロ? 眠ったのか・・・。 ボクにだけ言わせておいてズルイぞ。 お休み・・・絶対に幸せにするから、ボクだけを見て・・・」

 呉尊、今なんて言ったのかな・・・やさしい声が子守唄みたい・・・。

         
*    *    *

 翌日、事務所に行くと、衣裳部屋で亞綸が待っていた。 予想通り怒った顔して。

「亞綸、おはよう。 ごめんね、早くに持ってきてくれて。 携帯ないと仕事にならないから、助かっちゃう。」

「他に言うことないの? ボクはヒロのこと信じてたのに! アミンも遅い時間に帰ってきて様子おかしいし・・・。」

 亞綸は携帯を渡すふりして、さっと引っ込めた。 アミンがどうとかつぶやいてたけど何かあったのかな・・・。

「大丈夫よ、亞綸が心配するようなこと何もなかったから・・・。 だから返して。」

「何もなかったって、やっぱりアイツと会ったってこと? ほら、着信五件も入ってるよ。大事な電話かも。 早く返して欲しかったら本当のこと言いなよ!」

 亞綸が着信履歴をちらつかせる。 その中に連絡を待っていたブランドショップの名前があった。 狙っていたジャケットが入荷したのかも。 早く押さえないと、 他のスタイリストに回されてしまう。

「もう! 亞綸ったら子供じゃないんだから意地悪しないでよ! 今日のブランド新作ファッションショーとパーティーに必要なジャケットが手に入らなくてもいいの? そうなったらマーキーから借りてくるわよ~素敵な柄のジャケットを!」

「えーー! やだよぉ! どっちが子供だよ! ホントに大人げないな~。」

 亞綸はふてくされながらも携帯を返してくれた。 すぐにショップに電話して、ジャケット入荷を確認し、ホッとする。

「亞綸には本当に感謝してる。 ごめんね、嘘つかせちゃって・・・。」

「じゃ、お詫びに今日、ボクの付き人してよ! いつも衣装着せたらすぐに帰っちゃうでしょ。 パーティーも一緒に出ようよ! ヒロのドレス、どれにする?」

 亞綸にはかなわない。衣裳部屋には数点のドレスがあったけれど、今日のブランドのドレスは去年のデザインのものしか見当たらなかった。

「仕方ないわね・・・マネージャーの了解とれたらね。 ドレスは後でショップに行くから、そこで借りられるようにお願いしてくる。」

 本音を言えば、新作発表のショーは見ておきたかったから願ってもないことだった。 

 結局、マネージャーは大東の台中での仕事に同行するらしく、私が亞綸に付き添うことは感謝されたぐらいらしい・・・。 亞綸によるとだけど。

    第十二話「大東のお母さん」~アミン篇につづく・・・

   目次と登場人物~ヒロ&アミン篇

   目次と登場人物~大東&亞綸篇

   目次と登場人物~SP

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