« 飛輪海小説『ステップアップ!』第一話~ヒロ篇 | トップページ | 飛輪海小説『ステップアップ!』第三話~ヒロ篇 »

飛輪海小説『ステップアップ!』第二話~アミン篇

         第二話「亞綸とわたし、そして亦儒」~アミン篇 

 わたしが今かかえている問題は二つある。 一つは明日が締め切りの原稿が書きあがっていないこと。 もう一つは一ヵ月後にせまっている婚約披露パーティーのドレスを早く決めなければならないということ。

 わたしは今持っているドレスで充分なのに、母は絶対にオーダーメイドで作ると言ってきかない。
 

 母と私が親子になったのは、ちょうど十年前で私が十六歳の時だった。 実の母を亡くしたのが十二歳の時で、四年の間、母親がいなかったわけだけど、お手伝いさんがいたのでわたしはそれなりに不自由なく暮らしてこられた。

 だから父が再婚すると聞いた時、初めは心の中では反対していた。“新しい母親”なんて面倒なだけ、しかも私より四つ下の男の子が弟になるなんて、とんでもない話だと思っていた。 

 母とその男の子に初めて会った時のことは今でもよく覚えている。 母のうしろに隠れるように立っていて、顔を半分だけのぞかせてわたしのほうを伺っていた。 わたしは初め、気にしないふりをしていたけど、本当は気になってしかたなかった。 なぜなら、その男の子が、それまで見たことないくらいに、可愛い男の子だったからだ。

 十二歳のわりには背が低く、幼さが残っていたけれど、誰もが振り返るような、いわゆる“美少年”だった。 今ではその男の子が、台湾で一番人気のあるアイドルグループの炎亞綸なのだ。 

 弟は、わたしのことを愛称の「アミン」と呼ぶ。人の前では「姉さん」と呼んでいるようだけど、私の前では一度もそう呼んだことがなかった。 決して仲の悪い姉弟ではなかった。 ただ、特に思春期の頃の弟は、わたしに甘えたがらず、同等であろうとしていた気がする。 それどころか優位に立ちたかったのかもしれない。 

 わたしが執筆とドレスを考えあぐねていると、亦儒から携帯に電話がはいった。 亦儒はわたしのフィアンセとなった人だ。 弟と同じグループのメンバーでもある。 彼は本当にマメで、一日一度は電話してくる。

「アミン?今どうしてる?」

 亦儒の快活な声が心地よく耳に響いてくる。

「亦儒、どうすればいい?筆もすすまないし、ドレスも決まらないの・・・。」
 
 わたしはこれまでも、何かあるごとに亦儒に相談してきた。 亦儒はいつも親身になってくれたし、すぐに解決法を導き出しくれた。

「まずドレスは、自分で決めずに人に選んでもらったほうがいいよ。 自分の好みより、何が似合うのかをわかってる人にね。 あとでヒロに頼んでみるよ。小説は、もう気分転換しかないんじゃない? 今夜ボクが会いに行ってあげるよ。 ヒロも誘って。」
 
 亦儒のアイデアは聞いただけでもう解決したような気分にさせてくれる。

「亦儒ありがとう! じゃあ、お母さんに相談して、ごちそう作って待ってるね。」

「百万回言っても足りないくらいに愛してるよ!」
 
 亦儒はいつも通りにそう言ってKISSの音をさせたてから電話を切った。 

 もう今ではだいぶ慣れたけれど、亦儒の熱烈な愛の言葉にはやっぱり照れてしまう。元々饒舌で、話好きだったけれど、わたしにアプローチし始めてからの亦儒のくどき文句の数々は恥ずかしくて誰にも言えないくらいだ。
 

 亦儒と付き合うようになったのは半年前のことだった。 それまでは本当にいいお兄さんのような存在で、しかも人気アイドルだったから、一人の男の人として見たことがなかった。 だから今、婚約までしてしまったことが信じられない気もする。
 

 亦儒は一年後には芸能界を引退して、お義父さまの会社を継ぐことになっている。 私は結婚してからも小説家を続けさせてもらえるし、実家近くのマンションで二人暮らしの予定だ。 誰がきいてもうらやましがるような理想の結婚なのだ。

              第三話 「阿旭との再会」~ヒロ篇へつづく・・・

   目次と登場人物~ヒロ&アミン篇

   目次と登場人物~大東&亞綸篇

   目次と登場人物~SP   

|

« 飛輪海小説『ステップアップ!』第一話~ヒロ篇 | トップページ | 飛輪海小説『ステップアップ!』第三話~ヒロ篇 »

飛輪海小説『ステップアップ!』」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 飛輪海小説『ステップアップ!』第一話~ヒロ篇 | トップページ | 飛輪海小説『ステップアップ!』第三話~ヒロ篇 »