« 飛輪海小説『ステップアップ!』第四話~アミン篇 | トップページ | 飛輪海小説『ステップアップ!』第六話~アミン篇 »

飛輪海小説『ステップアップ!』第五話~ヒロ篇

        第五話「呉尊の告白」~ヒロ篇

 それは私がまだアシスタントだった頃、得意先のショップにマーキーと呉尊と三人で立ち寄ったときのことだった。 マーキーは選んだ服や小物を私に渡すと、

「じゃ、お願いね!」

とウインクしてさっさと自分はそこのイケメンオーナーの元に行ってしまったので、私は試着室の呉尊に服を渡し、着替え終わるのを待っていた。

「マーキー! ストールが上手く巻けないんだけど、どうしたらいい?」

カーテン越しに呉尊が聞いてくるけど、マーキーは相変わらずイケメンオーナーと話し込んでいて気付く様子もない。

「ヒロですけど、私がやるように言われているので中に入ります。いいですか?」

「頼むよ。ヒロ。」

 カーテンを体の分だけ開けてすばやく中に入る。試着室の中は、大人二人が入るとさすがに窮屈だった。 この頃、呉尊に対して恋愛感情を持ち始めていた私は、密室の至近距離で二人きりのこの状態に、ドキドキしないわけにはいかなかった。
 私が小柄なので、背の高い呉尊が体をかがめてくれる。 ストールを呉尊の首に巻きつけようと私は精一杯背伸びすると、お互いのほっぺがくっつきそうなくらいに顔が近づいてしまう。 一歩下がろうとしたけれど、うしろはすぐ壁だ。 そのために間近でまっすぐに見つめあう状態になってしまった。 離れようにも離れられない。 離れるどころか呉尊は私の後ろの壁に右手をつき、顔を近づけてくるような気がして、思わず私は目をつむった。 そして呉尊の唇が・・・

「きゃーーーヒロったらヒロったら!」

 急にアミンが私の肩をバシバシ叩くので、私は話しを中断するしかなかった。 もちろんホッとしたけれど。

「アミン痛いってば!」

「だって呉尊にそんな強引なとこがあるなんてびっくりね。 ヒロの気持ちも確かめてないのに大胆よね~。 それでそれでどうなったの? どんなキスだった?」

「どうにもなってないったら。急にマーキーが入ってきたから大変なことになったんだから。 スタイリストに手をつけるなんてどういうつもりなの~!って呉尊、怒られちゃって。 そしたらね、好きな子とこんなシュチュエーションになってキスもできない男にはなりたくないって胸張って言うの。」

「え? それって第三者に向かっての間接的告白ってこと? なんかそれはそれで感動しない?」

 アミンは目を輝かせてる。 まさか小説のネタにしたりしないよね? その日のうちにお泊りしちゃったなんて、絶対に言えない・・・。

「そうだ、ヒロ。 婚約披露のドレスも、ウエディングドレスも、できたらヒロにデザインしてもらいたいんだけど、頼めるかな? お願い!」

 アミンからの突然の依頼だったけれど、私は二つ返事で引き受けた。 色や素材の相談に花を咲かせていると、亞綸のお母さんが入ってきた。

「ヒロ、もう遅い時間だから、悪いけど大東を送ってもらえないかしら。 なんだか悪酔いしちゃってて、一人で歩いて帰るってきかないのよ。 タクシー呼んであるから。」

 リビングに戻ると、亦儒と亞綸は酔いつぶれたのか雑魚寝していた。 玄関に行くと大東がブツブツつぶやきながら、くつひもを結ぼうとしているけどまともに結べずにいた。

「ね、大東。 私が結んであげるから一緒に帰ろうね。」

 泥酔している大東を自宅に送り届け、呉尊不在のマンションに帰り着いた頃は深夜0時を回っていた。 まさか最後に酔っ払いの面倒をみることになろうとは。 大東はタクシーの中でずっとアミンのことを言っていた。 私は聞いたことすべてを自分一人の胸の中におさめることにした。 多分、大東も覚えていないと思うから。

 今日一日、いろんなことがありすぎた。 もう今は何も考えたくない。 ベッドに倒れこんで、私はそのまま眠ってしまった。

    第六話 「大東との思い出、亦儒の助言」~アミン篇につづく・・・

  

   目次と登場人物~ヒロ&アミン篇

   目次と登場人物~大東&亞綸篇

   目次と登場人物~SP

|

« 飛輪海小説『ステップアップ!』第四話~アミン篇 | トップページ | 飛輪海小説『ステップアップ!』第六話~アミン篇 »

飛輪海小説『ステップアップ!』」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 飛輪海小説『ステップアップ!』第四話~アミン篇 | トップページ | 飛輪海小説『ステップアップ!』第六話~アミン篇 »